富士山保全・適正活用推進特別委員会 二日目

2025年8月26日(火)

富士山保全・適正活用推進特別委員会にて、8月25・26日の二日間にわたり実施した現地視察。

二日目は富士宮地区を訪れました。

1.富士山本宮浅間大社

最初に伺ったのは、全国1,300余の浅間神社の総本宮である 富士山本宮浅間大社 です。宮司の小西英麿氏より、神社の由緒と富士山信仰の歴史について説明をいただきました。

浅間大社は、富士山を浅間大神としてお祀りしたことを起源とし、徳川家康からの厚い保護も受けてきた歴史ある神社です。表口(富士宮口)から登りつめた山頂には奥宮が鎮座し、開山期の7月・8月には神職が奉仕し、国家安泰や登拝者の安全祈願、結婚式や御朱印授与なども行われています。また、須走口・吉田口・河口湖口からの登山道頂上には久須志神社が鎮座し、奥宮の末社として登拝者を迎えています。

富士登山そのものは古来より「登拝」と呼ばれ、神徳を仰ぎながらの修行的要素を持ち、江戸時代には「富士講」による団体登山として大きく発展しました。頂上で奥宮と久須志神社を参拝した後、お鉢(火口)を一周する「お鉢巡り」が習わしとなっています。

一方で、実際の現場では、悪天候下で山小屋が予約者以外を受け入れず、暴風雨に遭った登山者を奥宮で保護した事例もあるなど、安全面での課題も報告されました。山頂という極めて過酷な環境における信仰と登山者受け入れの両立は、現在も続く大きなテーマです。

2.富士宮駅前交流センターにて、富士山保全や観光に携わる関係団体からヒアリングを行いました。

最初にお話しいただいたのは、(一社)静岡富士山ガイド協会 理事の内田幸男氏です。

同協会は富士山周辺に居住するガイド約50名が所属する団体で、富士宮口では最大規模。一部は吉田口でも活動しています。協会では「軽装登山の禁止」「適正なガイド配置」「ルール・マナーの周知」「山小屋宿泊の必要性」を徹底し、悪天候時は即時ツアー中止を判断するなど、安全登山の普及に努めています。

一方で課題として、悪天候時の富士山スカイライン規制の緩さや、軽症者対応がすべて遭難事故扱いになる救護体制の不備が挙げられました。結果的に「静岡県側で遭難が多い」との印象を与え、集客にも影響しているとのことです。

安全で正しい富士登山のためには、規制や救護体制の改善が急務であるとの強い要望が示されました。

続いてお話を伺ったのは、富士急静岡バス株式会社の代表取締役社長の斎藤俊之氏です。

同社からは、富士登山における安全と利便性の両立に向けた取り組みと改善点が示されました。特に課題として強調されたのは、悪天候時の富士山スカイライン規制 と 救護体制の不十分さ の2点です。

富士宮口は太平洋側に面するため天候変化が激しく、水ヶ塚公園では無風でも五合目以上は暴風雨になるケースが頻発します。しかし水ヶ塚と五合目の管理が分かれており、情報共有が不十分なため、登山者が五合目まで上がってしまい無理に登山を続けて遭難につながる例が多いとのこと。利益優先のツアー会社が警報下でも登山を強行する実態も報告されました。悪天候時には、雨量だけでなく「警報発令」を基準にした積極的な通行規制が必要だと強い指摘がありました。

また救護体制については、富士宮口では軽度の体調不良や転倒でも警察が介入するため「遭難事故」と扱われ、結果的に「静岡県側は遭難が多い」という印象を与えてしまっているのが現状です。一方、吉田口ではガイド団体や民間会社が現場で対応し、軽症は遭難扱いとならない仕組みが整っています。この差が集客にも影響していることから、富士宮口でも軽症対応が可能な救護体制を確立すべきだとの要望が出されました。

富士急静岡バスからは、交通と救護の現場を担う立場から、規制や体制の改善が強く求められました。安全で安心な富士登山を支えるためには、現場のこうした声を政策に結びつけていくことが重要だと感じました。

次に、静岡県タクシー協会 富士富士宮支部 シャトル運営幹事の関典之氏からも現状について説明を受けました。

関氏によれば、タクシー乗車人数はここ数年で「半減」しており、その原因は必ずしも明確ではないとのことでした。ただし背景としては、コロナ禍以降の観光需要の変化や自家用車利用の増加、さらには配車アプリの普及など交通手段の多様化が影響している可能性があります。

このままではタクシー利用の減少が事業者の経営悪化につながり、結果的に地域住民や観光客の「最後の足」としての役割が果たせなくなる懸念があります。特に富士登山では、シャトルバスの補完や夜間・悪天候時の緊急移動手段としてタクシーは欠かせない存在であり、持続可能な運行体制をどう確保するかが大きな課題です。

今後は、外国人観光客にも使いやすい配車アプリ対応や、多言語での案内、地域の移動弱者支援制度との連携など、利便性を高める工夫が必要です。同時に、タクシードライバーの確保や働き方改善といった基盤整備も避けて通れない課題として指摘されました。

タクシーは、観光と地域交通をつなぐ「縁の下の力持ち」。利用者の減少をいかに食い止め、信頼される移動手段として維持していけるかが問われています。

3.富士宮口五合目

二日目の最後に視察したのは 富士宮口五合目。ここでは、令和7年度の開山期に実施される富士宮市の各事業、そして令和3年に焼失した旧レストハウスに代わる新施設整備計画について説明を受けました。

富士宮市では、登山者の安全と利便性を支えるために、指導センターや避難施設、仮設トイレなどを整備し、充実した体制を敷いています。総合指導センターには登山ナビゲーターが常駐し、臨時派出所としての機能も担っています。隣接する避難施設には売店や自動販売機、レンタル用品が備えられ、24時間利用できる休憩・避難スペースが設けられています。また、開山期には仮設トイレが増設され、バリアフリートイレも整備されることで、快適性と安心感を高めています。

さらに、登山ナビゲーターによる安全指導や多言語での案内体制も強化されており、外国人登山者にとっても安心できる環境が整っています。八合目では救護所(衛生センター)が開設され、医師や看護師、医学生が高山病や外傷に対応しており、昨年度の受診者370人のうち21%が外国人という実績からも、その国際的役割の大きさがうかがえます。加えて、残雪処理やバイオトイレの維持管理といった環境対策も続けられ、富士登山の安全と環境保全を両立させる仕組みが整えられています。

加えて、令和3年に火災で焼失した旧レストハウスの跡地には、新たなレストハウスの整備計画が進められています。この施設は、休憩やトイレ、案内機能を備えるだけでなく、災害時の避難拠点としての役割も担う複合施設として構想されており、令和10年度の完成を目標に検討が続けられています。

富士宮口五合目は、観光と登山の拠点であると同時に、安全と環境を守る最前線です。新しいレストハウス計画と現行の多様な取り組みが一体となることで、富士登山の拠点としてさらに進化していくことが期待されます。

8月25日・26日の二日間にわたり、富士山保全・適正活用推進特別委員会として現地視察を行いました。初日は須走・御殿場地区、二日目は富士宮地区を訪れ、それぞれの現場で多くの課題と取り組みを直接伺いました。

須走浅間神社では、信仰の拠点としての在り方や行政との調整の難しさが語られ、インフォメーションセンターでは下山道の間違い対応や悪天候時の安全確保に尽力する姿を拝見しました。須走五合目では、開山日の不統一や落石対策など登山環境の課題が示され、御殿場市では教育委員会やボランティア協会、NPO法人ホシガラスの会から、文化遺産の保存管理や市民による環境保全活動の重要性を伺いました。

二日目の富士宮地区では、富士山本宮浅間大社において登拝文化の歴史と信仰の重みを再認識するとともに、ガイド協会からは悪天候時のスカイライン規制や救護体制の改善要望を、バス・タクシー事業者からは利用者減少や安全確保の課題を伺いました。さらに、富士宮口五合目では、避難施設・トイレ・救護所・ナビゲーター配置など多面的な取り組みに加え、令和3年に焼失したレストハウスを新たに整備する計画についても説明を受けました。

二日間を通じて強く感じたのは、「富士山を守り、次世代へ引き継ぐ」という思いは行政・地域・市民団体すべてに共通しているということです。しかし、現場では制度や体制の不備、静岡・山梨間の連携不足、入山料の使途や安全対策など、解決を要する課題が山積しています。

世界の宝である富士山を守るためには、現場の声を政策に的確に反映し、行政の仕組みを改善していくことが不可欠です。今回の視察で得た学びを、今後の県政にしっかりと活かしてまいります。