富士山保全・適正活用推進特別委員会 現地視察(1日目)

2025年8月25日(月)

8月25日・26日の二日間にわたり、富士山保全・適正活用推進特別委員会として現地視察を行いました。

初日(25日)は須走・御殿場エリアを中心に、二日目は富士宮地区を訪問し、それぞれの現場で課題や取り組みについて直接お話を伺いました。

1.富士山東口本宮冨士浅間神社(須走浅間神社)

ここでは石橋良弘宮司より、現場が抱える課題について率直なお話を伺いました。外国人参拝者の増加を見据えた対応の必要性や、建物修繕や移築の際に文化庁など行政手続きが硬直的で現場感覚と乖離していること、また富士山作業部会が実質的に報告会にとどまり静岡・山梨両県の足並みが揃っていないことなど、幅広い課題が示されました。さらに、登山鉄道構想や冬山登山については、信仰と安全の観点から「論外」との強い指摘がありました。

加えて、須走口9合目の迎久須志之神社が倒壊寸前で放置されている現状や、老朽化した登山道・保護柵の整備が急務であること、さらには富士山保全協力金(入山料)の使途が不透明で、インフォメーションセンターの立地や活用にも課題があることが挙げられました。

「現場の声を反映しないままでは、富士山の保全も観光も持続可能にならない」――宮司のお言葉は重く、私たち県議会の責任を改めて考えさせられました。

2.須走インフォメーションセンター

小山町観光協会の皆さまから、現場で直面している課題や対応について詳しい説明をいただきました。

ここでは、6月中旬や9月の「オフ登山」シーズンに登山者が急増している現状が報告されました。特に7月初旬は吉田口が開通し山小屋が営業しているため、須走口へ多くの登山客が流れ込みます。インフォメーションセンターでは入山規制はできないため、来館者に「登山の完全装備」「登山計画書の提出」「携帯トイレの携行」を呼びかけていました。

また、大きな課題となっているのが「下山道の間違い」です。吉田口と須走口の分岐で誤って須走に下山してしまう登山客は昨年780人、本年8月22日までで477人にのぼり、その多くは外国人。対応は深夜に及ぶこともあり、タクシー待機場所や照明が無い中で、スタッフが人道的見地から懸命に対応されているとのことでした。

さらに、富士スバルラインが荒天で通行止めになると、須走口にタクシーで登山者が集中するケースも多く、平均風速30m/sを超える危険な状況下でも登山を強行する人々への助言や山小屋キャンセル対応も行っていると伺いました。安全確保の最前線として、現場のご苦労を強く感じました。

その他にも、臨時派出所の常駐日数の不足、登山バスや交通情報のリアルタイム提供、Wi-Fi環境の改善など、登山者受け入れ体制の課題が多く示されました。一方で、スタッフの皆さんは「目配り・気配り・心配り」を合言葉に、救急救命講習の受講や登拝証・富士講衣装体験などの“おもてなし”を実践しており、外国人を含む多くの登山者に喜ばれているとのことでした。

現場で寄せられた声としては、山梨県側との開山日の統一やオフ登山規制のあり方、下山間違いへの抜本的な対応などが特に重要であると感じました。富士登山の安全と秩序を守るため、私たちも真剣に取り組むべき課題です。

3.須走五合目

小山町経済産業部商工観光課より、富士登山事業の概要と課題、さらに町が進めている具体的な取り組みについて説明を受けました。

まず課題として挙げられたのは、静岡・山梨で開山日が統一されていないため、吉田口から登頂した登山者が須走口側の山小屋やトイレがまだ開いていない時期に利用せざるを得ない問題です。今シーズンから入山料徴収が始まったことで「開通前登山」という新たな課題も生じています。また、山頂付近における落石の危険性や、ブルドーザー道と登下山道が重複する箇所の安全確保といった課題も指摘されました。

一方、小山町が進めている取り組みとしては、須走インフォメーションセンターの運営、安全登山指導や情報提供、さらには有事の避難場所の役割を担う体制が整えられています。本年度からはセンター内に救護所を設置し、看護師が常駐することで登山者や観光客の安全確保が一層強化されました。

また、山小屋の安全・快適性を高めるための助成制度や、「須走口登山ガイド」の認定制度によるガイドの資質向上、小富士遊歩道の整備、登山道巡視・標識管理、五合目公衆トイレや駐車場の維持管理など、多岐にわたる施策が実施されています。さらに、オフシーズンにも自然体験の場を提供するため、認定ガイド同行ツアーによる「段階的規制」の社会実験も行われており、外国人ツアーを中心に多くの利用があったとのことでした。

須走五合目は、観光と登山の結節点として非常に重要な拠点です。現場の課題に直面しながらも、小山町が安全登山と環境保全の両立に向けて積極的に取り組んでいる姿勢を強く感じました。

4.御殿場市の富士山保全に携わる関係団体よりヒアリング

御殿場市役所にて、富士山保全に携わる関係団体(御殿場市教育委員会社会教育課・御殿場ボランティア協会・NPO法人富士山ホシガラスの会)より、それぞれの立場からお話を伺いました。

御殿場市教育委員会社会教育課からは、世界文化遺産「富士山」の保全について、登録までの経緯、構成資産、保存管理の枠組みについて説明を受けました。静岡・山梨両県と関係自治体による「世界文化遺産富士山協議会」が設置され、専門家や地元住民の意見も踏まえながら「包括的保存管理計画」に基づいて調査・管理を進めているとのこと。御殿場市としても特別名勝・史跡富士山の保存管理計画を策定し、現状変更申請の窓口業務や残雪調査への同行、巡礼路や御殿場口登山道の調査などを進めていることが紹介されました。

続いて、御殿場ボランティア協会からは、富士山清掃活動や登山道整備など、地域住民や市民ボランティアによる実践的な活動について説明がありました。市民が主体的に関わることで、富士山の環境を守り次世代につなげていく意義を強調されました。

最後に、NPO法人富士山ホシガラスの会からは、野鳥や高山植物を含めた自然環境保全の視点から、須走口・御殿場口での活動や調査研究の成果について報告がありました。特に富士山特有の生態系を守るためには、登山者への普及啓発や現場での環境教育の充実が不可欠であるとのご意見をいただきました。

行政、ボランティア、市民団体がそれぞれの立場で富士山保全に携わっている姿を直接伺うことができ、富士山の価値を守り続けるためには多様な主体の連携が不可欠であると強く感じました。

5.富士山御殿場口五合目 視察

御殿場口五合目は、他の登山口に比べると訪れる人が少なく、静けさと自然の雄大さを感じられる場所です。自家用車でもアクセス可能で無料駐車場も整備されている一方、救護体制や案内機能の不足といった課題も残されており、登山者の安全確保のためにさらなる整備が求められています。

その一角に佇むのが、御殿場登山道開設100周年を記念して昭和58年に建立された「百周年記念碑」です。度重なる雪崩で倒されてしまいながらも、地元関係者の尽力によって再び起こされ、今もこの地に残されています。石碑を守り続けようとした人々の思いと富士山の力強さが重なり合い、この場所を特別なものにしています。

「倒れても起き上がる石碑」。その姿は、幾度の困難を乗り越えてきた御殿場口登山道の歩みや、富士山を守り続ける人々の粘り強さを体現しているように感じられました。訪れる人に勇気を与える存在として、この場所はまさに 新たなパワースポット と呼ぶにふさわしいのではないでしょうか。

自然の厳しさと静けさ、そして人と山の歴史が交差する御殿場口五合目。今回の視察で、その魅力と課題を改めて実感しました。

8月25日は、須走・御殿場エリアを中心に現地視察を行いました。

須走浅間神社では、信仰の拠点としての歴史と現場の課題を伺い、インフォメーションセンターでは下山道間違いや悪天候時対応など、登山者の安全を支える現場の努力を学びました。須走五合目では、開山日の不統一や落石対策、ブル道の安全確保といった具体的課題が示されました。さらに御殿場市の関係団体からは、文化財保全や市民活動の重要性について説明を受けました。

最後に訪れた御殿場口五合目は、静かな環境の中に課題と可能性が共存する場所でした。自家用車でアクセス可能な利便性がある一方、救護体制や案内機能は十分とはいえず、安全確保のための整備が求められています。その一角にある「百周年記念碑」は、雪崩で倒されながらも再び姿を現す歴史を持ち、まさに「倒れても起き上がる石碑」として、富士山と人々の粘り強さを象徴していました。訪れる人に力を与える存在として、新たなパワースポットとも感じられました。

一日目を通じて、「信仰」「安全」「文化」「環境」そして「地域の誇り」が交錯する富士山の姿を多角的に確認できました。翌26日(二日目)は富士宮地区を訪問し、また異なる角度から課題と取り組みを伺いました。