2025年3月27日(木)
九州視察二日目は熊本県を訪問してきました。
〇熊本県庁
2024年12月に台湾の半導体大手TSMC(台湾積体電路製造株式会社)が、熊本県菊陽町に新工場が建設され、この工場を熊本県庁に伺う前に車窓から観てきました。
この工場は、ソニーセミコンダクタソリューションズやデンソー、トヨタ自動車との合弁会社JASM(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing)によって運営されます。
TSMCの進出により、熊本県内では関連企業の進出や設備投資が増加しています。特に、TSMC建設予定地近隣(県北)に関連企業が集中しており、九州自動車道沿いに南北へ広がりを見せています。
また、地元の教育機関も半導体に特化したカリキュラムを開始するなど、人材育成に向けた取り組みが進められており、TSMCの熊本進出は、地域経済や産業構造に大きな影響を与えると期待されています。
恥ずかしながらTSMCが国内に進出したことで熊本県で半導体産業が躍進しているとの認識でしたが、既に熊本県では、1960年代に三菱電機熊本工場の進出を始まりとして九州に半導体産業が集積(=シリコンアイランド九州)したことで、熊本県では産業振興施策として半導体分野を戦略的分野と位置づけ、 国の施策とも連動した県独自の戦略的誘致を58年もの長きにわたって取り組んできたことが一番の要因だということが分かりました。
特に1980年代に熊本県がハイテク産業の集積を目指した地域開発計画「熊本テクノポリス構想」において、多数の工業団地の形成や支援体制等の構築があり、多くの企業誘致・産業育成ができたことが大きいそうです。
他にも熊本県の地形や地質(火山性堆積物)のおかげで地下には大量の地下水が蓄えられおり、半導体製造には欠かせない大量の超純水が年間を通じて安定して確保できるとのことは大変な優位性の高さだということでしたが、更なる取り組みとして限りある自然資源の保全のために水田に水を張って溜め続ける「水田湛水」により人工的に地下水の涵養を行っているとのことでした。
課題や問題としては、企業進出の需要が急激に高まり、土地確保のために農用地の集団化、農村産業導入法に基づき基盤整備が行われていない農用地へ進出企業や住宅地を集約・誘導しているが、それがきっかけとなって辞めてしまう農家もあることや交通渋滞が大きな問題となっているそうです。
意外だったのは、これだけの多くの企業があれば、Iターン・Uターン就職が多いのかと思っていましたが、技能が限定的な職種ということもあり、最近となって少しずつ効果が出てきている程度だということでした。
視察前に半導体企業の賃金が非常に高いと聞いていたため、只でさえ人手不足の現代において他の企業との兼ね合いが気になっていましたが、他の企業との協議が行われそこまで大きな問題にはなっていないとのことでした。
企業誘致は一見効果的にも思えますが、インフラ整備、環境保全、地域住民への配慮、地元経済への影響、雇用のミスマッチ、行政の負担増の他、税収増加は魅力的でも税優遇などの特例処置を与えすぎると結果的に自治体の財政がプラスにならない場合があることや企業が撤退した場合に税収が大幅に減少するといった問題もあります。
熊本県のように長い年月を掛けてその土壌づくりをした結果が現在の成果であり、この成果だけに捕らわれず、地道な土壌づくりから学ぶことが大切だと思いました。




