公共交通のありかたについて調査研究視察

2024年1月16日・17日

 静岡県では、自家用車に依存したライフスタイルが定着したことや人口減少の影響等を受けて鉄道や路線バス、タクシー等の利用者数が減少傾向にあります。利用者数の減少は減便や廃止等のサービスレベルを低下を招き、これが更なる利用者数の減少を招くといった負のスパイラルを生じさせており、交通事業者の経営環境はもとよりは厳しい状況にあったが、新型コロナウイルス感染症拡大による外出自粛や経済活動の停滞により利用者数は更に減少し、現在もコロナ禍前の水準まで回復していません。更には運転手不足が一層深刻となったことから、事業の存続自体が危ぶまれる状況となっています。

 このため、静岡県では、令和4年7月に「静岡県地域公共交通交通活性化協議会」を設置し、地域交通法に基づき、昨今の技術革新などを取り組むとともに、地域の多様な輸送資源の最大限の活用や住民共助による移動手段確保の取組などにより、持続可能な社会を支える利便性の高い公共交通サービスの提供に向けて、静岡県地域公共交通計画を策定することになりました。

(1日目)茨城県 境町

 茨城県の境町では、2020年11月に自治体初となる生活道路での自動運転(レベル2)バスの運行が始まり、乗車人数10名のEV型自動運転バス3台が定時・定路線で運行し、料金は無料です。

 また、車両導入等のコストはふるさと納税と補助金を活用し、運営は指定管理団体であるソフトバンク株式会社の子会社のBOLDLY株式会社及び株式会社マクニカに任せることで、この事業における町の運営コストを0にしています。

 その他にも、境町では、様々な創意工夫をした『まちづくり』で目覚ましい活躍をしており、地方自治体として、他力本願ではなく、町が一体となって『自らが稼ぐ』姿勢に大変感銘を受けました。

(2日目) 栃木県 宇都宮市・芳賀町

 栃木県の宇都宮市を南北に走る東北新幹線やJR宇都宮線がありますが、『芳賀・宇都宮LRT』は東西基幹公共交通の推進を目的として、現在は宇都宮駅から東にある芳賀町の産業拠点である工業団地に向かって開通しています。

 LRTとは、Light Rail Transit(ライト・レール・トランジット)の略で、低床式車両の活用や軌道・電停の改良による乗降の容易性、定時性、速達性、快適性などの面で優れた特徴を有する軌道系交通システムのことで、近年では、道路交通を補完し、人と環境にやさしい公共交通として再評価されています。

 芳賀・宇都宮LRTの運行は午前6時台から午後11時台まで。運転間隔はピーク時で6分・オフピーク時で10分毎。初乗り150円~400円で対距離制となっています。交通ICカードにも対応。運営は、行政と民間が出資した宇都宮ライトレール株式会社が担い、国が設けた「公設型上下分離方式」という仕組みを採用することで運営と整備の役割を分担します。停留所は19箇所あり、停留所の中にはトランジットセンター(交通結節点)が整備され、バスやタクシーに乗り継ぎができる上、自家用車や自転車を停めておくことができる無料の駐車場や駐輪場も用意されています。

 この事業が推進したことで、以前は工業団地や研究所、学校しか目立った建物が無かった宇都宮市の東側の地域が大きく開発されたことで、今では新しい小学校ができるほどの発展をしているとのことでした。

 将来的には宇都宮駅西側も事業化に向けて検討を進めているそうです。

 静岡県内でも既に満足のいく公共交通サービスを受けられない地域が発生しています。今回の視察で学んだことをしっかりと活かし、それぞれの地域の改善に向けたベストな選択をするためにその一助となれるようにこれからもしっかりと学んでいきます。